大相撲の関脇とは?大関・小結との違いや給料、昇進条件を徹底解剖
本場所の土俵で連日繰り広げられる熱戦を見つめるなかで、「関脇(せきわけ)」という地位がどれほど過酷で、どれほど特別な重みを持つのかを意識したことはあるでしょうか。横綱や大関といった絶対的な看板力士の影に隠れがちですが、実のところ、大相撲で最も激しい実力勝負が繰り広げられているのがこの関脇のポジションです。
関脇は単に「小結より上、大関より下」という中間管理職のような階級ではありません。最高峰の大関へ駆け上がるための発射台であると同時に、土俵上で最も過酷な試練を課される場所でもあります。本稿では、大相撲の番付構造から金銭事情、昇進を阻む極めて高いハードルまで、関脇という地位の真髄を余すところなく解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:関脇は大関の直下に位置する「三役」の中核であり、原則東西2名のみに限定される狭き門。
- 要点2:小結とは給与体系が同一ながら番付維持力で圧倒的な差があり、大関とは陥落リスクの面で天と地ほどの違いが存在。
- 要点3:大関昇進には「三役で直前3場所33勝」という過酷な目安が課され、1場所でも負け越せば即座に転落する非情な階級。
【番付の基礎】大相撲における「関脇とは」何か?三役の定義と人数の枠組み
大相撲のピラミッド型階層である大相撲番付において、関脇は横綱・大関に次ぐ第3位の地位に君臨します。名称の由来は江戸時代にさかのぼり、当時の最高位であった大関の「脇を固める席(配席)」であったことからその名が定着しました。
大相撲を語る上で欠かせないのが三役の定義です。本来の伝統的な制度上、三役とは「大関・関脇・小結」の3つを指します。しかし、現在の大相撲界では大関が事実上の特権階級として独立して扱われることが多く、日常的な相撲用語やメディア報道では「関脇と小結」を指して三役と呼ぶケースが一般的です。
関脇に座る力士の数にも厳格な原則が存在します。基本的に関脇人数枠は「東1名・西1名」の合計2名です。ただし、前場所で関脇力士が勝ち越して地位を保ち、同時に東西の小結力士が好成績を収めて昇進基準を満たした場合や、大関からの陥落力士が生じた場合などには、特例として3名(東1名・西2名など)あるいは4名に枠が拡大することもあります。定員が厳格に絞り込まれているからこそ、ここに名を連ねる力士は「いつ大関になってもおかしくない実力者」として畏敬の念を集めます。
小結・大関との決定的な違い|番付維持力と陥落リスクの境界線
関脇のポジションを理解する上で極めて重要なのが、すぐ下に位置する小結、そして頭上にそびえる大関との明確な違いです。まずは小結との違いに目を向けると、最大の違いは「勝ち越し時・負け越し時における番付の維持力」に表れます。
小結の場合、8勝7敗と勝ち越しても、関脇に空き枠がなければ翌場所も小結に据え置かれるケースが珍しくありません。さらに負け越せば、ほぼ例外なく前頭(平幕)へと転落します。一方の関脇は、8勝7敗の勝ち越しでも関脇の座を死守できる強固な防波堤を持ち、7勝8敗と1点負け越した場合でも、小結に踏みとどまれる確率が極めて高くなります。つまり、平幕への転落を食い止める「番付上の安全圏」としての強度が小結とは段違いなのです。
しかし、視点を上に移して大関関脇違いを比較すると、今度は関脇の過酷さが浮き彫りになります。大関には「カド番」という強力なセーフティネットが存在し、1場所負け越しても翌場所に勝ち越せば地位を失いません。これに対し、関脇にそのような猶予期間は一切なく、関脇陥落条件は極めて非情です。どれほど長く関脇を務めていようと、一度でも7勝8敗以下の負け越しを喫すれば、その瞬間に小結や平幕へと転落します。
なお、本場所の千秋楽において結びの3番を前に東西の上位力士が土俵に上がって四股を踏む三役揃い踏みは、関脇にとって大きな誇りとなる伝統儀式です。横綱・大関が不在あるいは休場した際には、関脇が堂々とこの大役の先頭に立ち、土俵の格式を支える重責を担います。
関脇の給料年収と幕内力士待遇|大関との間に横たわる「金銭の壁」
過酷な土俵を務める関脇ですが、その経済的待遇はどうなっているのでしょうか。日本相撲協会の規定に基づくと、関脇給料年収のベースとなる月給は約180万円(年間約2,160万円)に設定されています。これに年6回の本場所手当、力士褒賞金、特別手当、さらに活躍に応じた懸賞金や三賞(殊勲賞・敢闘賞・技能賞)の賞金が加算されるため、実質的な年収は約3,000万〜4,500万円規模に達します。
月給ベースで見ると小結も同額ですが、前頭(平幕)の月給約140万円と比較すれば、三役として相応の評価がなされています。また、日常生活における幕内力士待遇としても、個室の利用権、身の回りの世話をする付け人の増員、新幹線や飛行機移動時のグリーン車・ビジネスクラスの利用など、相撲界における「特権階級」としての手厚い保障が約束されています。
しかし、ここでも立ちはだかるのが大関との「金銭の壁」です。大関の月給は約250万円(年額約3,000万円)へと跳ね上がり、賞与や手当を含めた年収は5,000万円を優に超えます。さらに大関以上になればCM出演や巡業での手当も跳ね上がるため、関脇から大関への昇進は、名誉だけでなく経済面においても人生を一変させる巨大な分岐点となります。
大関昇進条件のリアル|「直前3場所33勝」と品格・力量の壁
関脇に座る力士が目指す唯一の頂、それが大関の地位です。しかし、相撲界において大関昇進条件ほど厳格かつ曖昧さを伴うハードルはありません。明文化された規定はないものの、長年の慣例として定められている不文律が「三役(関脇・小結)の地位で直前3場所33勝以上」という基準です。
1場所15日間の本場所において、3場所連続で平均11勝を挙げ続けることは並大抵の難易度ではありません。上位陣との総当たりが義務付けられる三役の地位で、横綱・大関からの執拗なマークをかいくぐり、常に2桁の白星を積み重ねる安定感が求められます。
さらに厄介なのは、単に「33」という数字をクリアすれば自動的に昇進できるわけではない点です。直前場所での優勝争いへの加担度合い、相撲内容の説得力、そして「大関にふさわしい品格と力量」が相撲協会理事会および審判部によって厳しく吟味されます。過去には33勝に到達しながらも終盤の失速を理由に見送られた例がある一方、直前場所での劇的な幕内最高優勝などを評価され、32勝で昇進を勝ち取った力士も存在します。関脇とは、この極限のプレッシャーと対峙し続ける試練の場なのです。
歴代関脇記録から見る「名関脇」と昇進を果たしたレジェンドたち
大相撲の歴史を紐解くと、歴代関脇記録には相撲ファンの胸を打つ数々のドラマが刻まれています。関脇に通算で最も長く在位した記録を持つのは、後に大関へ昇進して歴代最多勝を記録した魁皇(現・浅香山親方)の21場所です。魁皇と並び21場所の在位記録を持つ琴錦は、「F1相撲」と称された超高速の押し相撲を武器に、平幕で2度の幕内最高優勝を果たす大快挙を成し遂げながらも、怪我に泣かされ大関の座を掴むことができなかった悲運の「名関脇」として知られています。
ほかにも、強烈な左四つで横綱を苦しめ続けた長谷川(21場所)や、横綱キラーとして名を馳せた安芸乃島(12場所)など、大関昇進こそ逃したものの、歴代の横綱たちを最も恐れさせた職人力士たちが関脇の歴史を彩ってきました。
関脇在位の長さは、裏を返せば「横綱・大関を脅かす超一流の実力を極めて長期間にわたって維持し続けた」という揺るぎない証左です。この分厚い関脇の壁を打ち破って大関・横綱へと上り詰めた力士たちも、例外なくこの階級で自身の相撲を極限まで磨き上げました。
【関脇とは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:関脇は1つの場所に何人まで増えることがありますか?
A1:原則は東西各1名の計2名ですが、成績の兼ね合いで最大4名まで増えた実例があります。前場所の関脇が勝ち越して地位を保ち、小結が2名とも大勝ちして昇進基準を満たした場合や、大関からの陥落力士が重なった場合などに「東2名・西2名」といった変則的な番付が編成されます。
Q2:関脇で負け越した場合、番付はどこまで転落しますか?
A2:負け越しの点数によって異なります。7勝8敗など1点の負け越しであれば、小結に留まれるケースが多く見られます。しかし、6勝9敗を下回る大幅な負け越しや怪我による途中休場を喫した場合は、翌場所で前頭の上位から中位付近まで一気に転落するのが通例です。
Q3:大関から関脇に落ちてしまった力士は、すぐに大関に戻れますか?
A3:戻れます。大関から関脇へ陥落した直後の場所に限り「特例復帰規定」が適用されます。その場所で10勝以上の勝ち越しを達成すれば、直前3場所の通算成績に関係なく、翌場所で即座に大関へ復帰することができます。ただし、10勝に届かなかった場合は特例の権利を失い、再び「三役で3場所33勝」のゼロスタートとなります。
まとめ:関脇の激闘を知れば大相撲の面白さは何倍にも広がる
大相撲の番付において、関脇とは実力者がひしめく最もシビアな戦場です。大関のような地位の保護がなく、1場所の不調で転落するリスクを常に背負いながら、横綱・大関を撃破して自らの昇進を手繰り寄せなければなりません。
「小結との番付防波堤の差」「大関昇進に向けた3場所33勝への挑戦」「カド番のない緊張感」――これら関脇を取り巻く制度や背景を把握した上で本場所を観戦すると、土俵上で繰り広げられる一球入魂の取組が持つ意味が、これまで以上に鮮明に見えてくるはずです。土俵の要として君臨する関脇たちの熱き戦いに、ぜひ注目してください。 (出典: 関脇 と は(Yahoo!ニュース))